株式会社スタッフサービス・クラウドワーク
22歳から車椅子生活を続けている稲垣さん、実生活や働き方についてお伺いしました。
障がい者雇用に力を入れる企業で活躍
インタビュアー(以下:イ) 早速、仕事内容やお仕事を始められたきっかけなどを伺いたいです。
稲垣 『スタッフサービス・クラウドワーク』というところで働いています。主な業務内容は、データ入力や登録作業、情報の更新や修正、データ収集などです。
働かれている方々のほとんどは何らかの障がいを持っており、基本的には在宅で業務を行っています。
イ その中で稲垣さんが担当されている業務内容は何でしょうか。
稲垣 弊社に登録されている求職者に対して「こういうお仕事がありますよーと送る「スカウトメール」というのがあるのですが、その業務を今年の三月まで行っておりました。そして四月からは「求人票作成チーム」に変わりました。
イ 求人票作成とはどのようなお仕事でしょうか。
稲垣 営業が企業から取ってきた求人内容の叩き台のようなものをもらい、パソコンを使って入力し整理する仕事です。
イ 文章能力が試されそうですね。
稲垣 文章能力はそれほどいらないです。フォーマットがあるので、それを使て作成していきます。基本はそのフォーマットに入力していくだけでいいのですが、営業の方や求職者の方が見やすいように、文の体裁を整えたり必要な情報を取ってきたりするところに少し難しさがありますね。
イ 元々そういった作業が得意だったのでしょうか?
稲垣 そんなことはないです。私は22歳から突然中途障がいになって、車椅子に乗り始めたのが26歳ぐらいの頃でした。今は60歳の還暦なので、もう35年くらい車椅子に乗っていますが、やっぱり車椅子だと「仕事しよう」と思った時にどうしても事務作業になるんですよ。
仕事が大好きで、やりがいを感じているので続けられる
イ それで今のお仕事を選ばれたんですね。お話を聞いていると「仕事をどんどんやっていこう!」という活発なお気持ちがとても伝わってきます。
稲垣 はい、もう転職ばっかりでいろいろやってきました(笑)
イ 転職も大変ですよね。
稲垣 そうですね、環境が変わるので大変なんです。でもそんな中でもすごく仕事が好きで、やりがいを感じているので続けられています。今は車を手放しているんですけど、昔は車も持っていて自分で運転して通勤していたんですよ。
イ そうなんですか、とてもアクティブですね。どんどん外に出られていたんですね。
稲垣 はい、「車がないと外に行けない」って自分の中で勝手に思い込んでいたんです。生活必需品みたいな感じに。
でも車って維持費もかかりますし、今は住んでいるところが駅前でちょっと便利なので「車いらんわ」ってなってしまって(笑)。
イ そうなんですね(笑)。
稲垣 時間が経つにつれて障がいがにひどくなってきて、手の力がなくなってきたこともあり、運転がしんどくなってきたんです。
イ そうですよね。変化はありますよね。
稲垣 加齢による身体の老化も出てきて、自分の車に車椅子の積み降ろしをする作業が大変だと感じるようになりました。「もう車はなくてもいいや」と思って手放したときに、通勤しなくてもいい仕事を探していたら、リモートという働き方にたどり着きました。
色んなものを駆使すれば、どこへ行っても生きていける
イ コロナ前は旅行が趣味だったとのことですが、プライベートを楽しむ時も車なしで外に行かれていたんですか?
稲垣 はい、旅行先は海外が多く、電車で空港まで行けばそこからは飛行機なので、車に乗る必要がないんです。娘が結婚してタイとマレーシアに住んでいたので、そこに私も行って案内してもらう旅行を三回ぐらいしました。
イ どういうところが特に楽しかったですか?
稲垣 タイでは仏教の街アユタヤに行ったり、男性が女性の格好になって踊るショーを見に行ったりと、普段日本では見られないようなものを見られて楽しかったですね。
イ 逆に「これは大変だったな」ということはありますか?
稲垣 飛行機です。飛行機に6~7時間も乗ってないといけないのが長くて。
それでもお金さえ出せば良い飛行機に乗れるんですけど、なかなか乗れないですよね(笑)。
イ 車椅子で飛行機を利用される場合は、機内をどう移動されるんですか?
稲垣 大きな航空会社だと簡易的な車椅子に乗せてもらって、座席まで連れていってくれます。
イ そうなんですね。
稲垣 今は携帯があるから、翻訳アプリなどを使えばもっと便利に行けるんじゃないかなと思ってます。色んなものを駆使すれば、どここへ行っても生きていけますね。現在、孫が三歳なのですが将来は孫に車椅子を押してももらいながら一緒に海外旅行するのが夢です。
「車椅には乗ってるけど、障がい者には見えないね」
イ 普段はご友人と会われたりするんですか?
稲垣 最近はコロナウイルス流行の影響から、私も友人も警戒しているので、なかなか会うことはできないんですよね。ただ、うちはヘルパーさんにほぼ毎日のように来てもらっているので、その方と毎日お話しするみたいな感じですね。あとはリモートワークでも一日三回のミーティングがあるのですが、その時には「チームのみんなが集まって会話をする」っていう決まりがあるんです。そういった形でコミュニケーションはとっています。
イ そうなんですね、いわゆる健常者の中には「車椅子の人にどう接したらいいのか分からない」と感じている人もいるかと思います。一方で稲垣さんは、そのような壁を感じさせないような雰囲気ですね。
稲垣 (リモートでのインタビューのため)車椅子が映ってないから余計にそう感じるでしょう?
実際には家の中でも車椅子に乗っているんだけど、会ったことのあるみなさんから「車椅子には乗ってるけど、障がい者には見えないね」と言っていただけます。なんか普通にイスに乗ってる感じ?
そうですよね、恐らく稲垣さんの根の明るさが影響しているのかなと思うのですが、喜椅子生活が始まった当初は大変なことも多かったのではと思います。
そこからどのように今のような活発で明るくて楽しい雰囲気の方になられたのか、とても気になります。
稲垣 うーんどうなんでしょう。今は明るいけど、子供が独立して一人を満喫してる状態だから楽しく見えてるんだと思うんですよね。仕事も私生活も充実してるし。でも子育て中の頃は、子供が不登校になったり、いろんな問題を抱えたりしていた中で、私も仕事をしていたので本当に大変な時もありました。けれどもやっぱり仕事しているのがいいのかな。
仕事していなかったら「私、何するんやろう?」って思いますね。
自分の殻を打ち破って外に出ていく
イ 最後に、障がいを持っていることで社会との壁を感じていたり、就労に対して気が引けていたりする方々に対してメッセージはありますか。
稲垣 自分の殻にこもらない。自分の殻を打ち破って、やはり外に出ていくべきだと思いますよ。今はコロナ禍もあり、リモートでできる仕事が増えました。私の場合は年齢のことや二次障がいのこともあるので在宅でないと大変ですし、しんどくなってきたので家でやっていますけど、若い方は外にどんどん出ていくべきだなって思います。
自分で動けなくても送迎をしてもらうなどしてお仕事されている方がいらっ
やると思うんですけれど、やっぱり社会の中に出ていくっていうのはとても大切なことだと思います。
イ 改めて「一本筋の通った方なんだな」と思いました。今回は貴重なお話をありがとうございました。